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2010/05/09

天領・どぶろく ★★★

ラベル: 天領・どぶろく
マイ評価: ★★★

  • 蔵元: 天領酒造(岐阜県下呂市萩原町;飛騨萩原)
  • 屋号: 天領
  • 製造: 21BY
  • 酒米: ひだほまれ(たぶん)
  • 精米歩合: 不明
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: なし?
  • 日本酒度: 不明
  • アルコール度数: 9度以上10度未満
  • 美味しかった呑み方: 冷や
  • 火入れ: なし?
ヨメ子供を車中に待たせて中島屋で酒を買って出てくると,玄関ドアに貼ってあった「天領・どぶろく」の広告を見ていたヨメが「どぶろく呑みたい」.

早速店にとって返してどぶろくを所望.
300mL入りの小ぶりな瓶だった.

そういえばどぶろくと濁り酒はどう違う?
中島屋の女将さんに尋ねてみると,

■どぶろく=醪(もろみ)そのまま
■濁り酒=醪を荒く濾過して米粒程度は取り除いたもの

だそうで.

後で調べたら同じことが天領のサイトにも書かれてあった.

なるほど,そういえばかつて一度だけ,門外不出のはずの白川郷のどぶろくを某家で呑ませてもらったことがあるが,酸味たっぷりの米粒つぶつぶで,店で買う濁り酒とは違うものだった.

後に白川郷を訪れてどぶろく祭が奉納される神社で尋ねてみると,モロ蔵付き酵母・モロ生酛の最も古典的な酒造りを神社でしているそうで(※財務省の許可をちゃんと得ている),出来上がった醪をそのまま嗜むのもまた最も古典的な日本酒の形態である.

そんなどぶろくを天領酒造が商品化したとのことだが,どぶろく造りは清酒造りとは違う免許が必要だと天領のサイトで知ってビックリである.
18へぇ

さてそのどぶろく.

米粒がつぶつぶとそのまま口の中で踊る.
確かに濁り酒とは違う.
非常に爽やかな酸味がひろがる.
アルコールが9度-10度とかなり低めだが,これってひょっとして米粒込みの重量パーセントだから相対的に低いんだろうか?それとも酵母の発酵がまだ途中なんだろうか?

美味い美味い,実に美味い.
この酸味が良い.
大人の甘酒,といった風情である.

良い買い物をした.ヨメの言うことは聞くものである.

越州・桜日和 ★★☆

ラベル: 越州・桜日和
マイ評価: ★★☆

  • 蔵元: 朝日酒造(新潟県長岡市)
  • 屋号: 
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 千秋楽
  • 精米歩合: 55%
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: あり
  • 日本酒度: 不明
  • アルコール度数: 13度
  • 美味しかった呑み方: 冷や
  • 火入れ: あり
全国的には「久保田」で知られる朝日酒造だが,古くから地元では「朝日山」のラベルで知られている.
そしてもう一つ,「越州」というラベルもあって,自分は最近この越州がお気に入りである.

越州はもっぱら千秋楽という酒米で造られている.
千秋楽は元は新潟産の食用米だったらしい.
それがコシヒカリに取って代わられて以降,酒米として復活したとのこと.
朝日酒造のサイトに詳しい.

越州には5つのランクがある.

ランク ラベル 製法
1 壱乃越州 本醸造
2 弐乃越州 特別本醸造
3 参乃越州 特別純米
4 悟乃越州 純米吟醸
5 禄乃越州 純米大吟醸
(※ラベル名では4は験を担いで欠番)

控え目な旨味ながらも淡麗とは一線を画した柔らかさ・優しさがあり,とりわけ参乃越州から上のランクでその魅力がはっきりする.

越州は朝日酒造の本サイトから独立したサイトを開設している.


そんな越州シリーズだが,2年前から春限定ラベルの「越州・桜日和」が出荷されるようになった.

呑んでみると越州ならではの優しさだが,妙に薄味な感もある.
確かにアルコール13度と,原酒が流行る昨今としてはずいぶん低い度数である.
しかも醸造アルコール添加なので余計に味がマイルドになっている.

何も聞かずにただ口にしたら,「なんじゃこの薄めすぎの越州は」と思ってしまう.

ところが桜日和である.
このラベルだけで一気に形勢逆転という感じである.

桜日和と言われた途端に,「ああ,これは桜の酒だ」と膝を打って納得してしまう

3月半ばに入手して一口呑んだが,即座に,「これは桜が咲くまで取っておかねばならない」と決心した.
桜が咲いたらその下でこれを呑むぞと.

結局この春は子連れで歩いていける距離に良い桜がなかったので残念ながら花見酒とは行かなかったが,春にふさわしい,なかなか良い酒である.

逆に,春を過ぎたら呑む気が失せてしまいそう.
呑むならばうららかな陽気漂う今のうち.

2010/05/08

鶴齢・特別純米:酒米4種4連発



ラベル: 鶴齢・特別純米・山田錦/越淡麗/美山錦/五百万石

  • 蔵元: 青木酒造(新潟県南魚沼市)
  • 屋号: 
  • 製造: 21BY(確か五百万石だけ20BYだったような)
  • 酒米: 山田錦/越淡麗/美山錦/五百万石の4種
  • 精米歩合: いずれも60%
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: なし
  • 日本酒度: 不明
  • アルコール度数: 不明
  • 美味しかった呑み方: 冷蔵
  • 火入れ: あり
知人が「鶴齢の特別純米で4つの酒米で造り比べたというのを手に入れた」と利き酒に誘ってくださった.
ホイホイと着いていく.

鶴齢は米どころ魚沼は塩沢地区,かの「北越雪譜」の鈴木牧之(ぼくし)の生地とのことである.
蔵元のサイトによれば,「鶴齢」の名も牧之が名付けたとか.
最近宮脇俊三をしきりに読み返しているが, 氏の著書には北越雪譜が何度か紹介され,雪国の厳しさを切々と伝えているという.

読み返すにつれ,宮脇俊三は蓋し名文家である.
戦後間もない頃に鉄道紀行を確立した百閒先生の「阿房列車」には心底舌を巻いたが, 「時刻表2万キロ」と続く「最長片道切符の旅」は間違いなく現代の阿房列車である.
阿房列車の人を食ったようなあまりに飄々とした文体は,その実,百閒先生が身を削るようにして推敲を重ねた結実と聞いている.それを知ったとき文筆家の凄まじさに驚嘆したものだが,超の付く乗り鉄でありながらもらしさを微塵も感じさせない宮脇氏の抑えた筆致もまたそうした推敲の果てなのだろうか.

いや話は鉄道ではなく酒である.

これは蔵元が「鶴齢」のラベルで4種の酒米(酒造好適米)で同じ精米歩合で造り比べたという面白い純米酒たちである.
麹や酵母のことまでは分からなかったが,おそらく同じ条件で造ったのであろう.
実は蔵元のサイトを覗いてもこの4種の酒は紹介されていない.
期間限定の企画品だったのだろうか.


さて利き酒の席に身を収め,やおらいただいた.
山田錦→越淡麗→美山錦→五百万石
の順に賞味.





ラベル: 鶴齢・特別純米・山田錦
マイ評価: ★★☆
さすが山田錦である.
山田らしい華やかな香りがすぐに口全体にひろがる.
特に,口に含んだ最初の2-3秒間,舌の表面だけに現れる柑橘系の香りの“層”が舌の上を滑る感じになる.
これは面白い.

面白くて美味いのだが,山田錦はあまりにメジャーすぎて自分は少々持て余す感がある.
天の邪鬼と言ってしまえばそれまでだが, 実際,この香りの強さはなかなか食中酒としては成り立たないし,何口か呑むと舌が飽きてしまう気もする.

というわけで★2つ.



ラベル: 鶴齢・特別純米・越淡麗
マイ評価: ★★★
次は越淡麗.
越淡麗については「田友」のポストを参照.
やはり米の名の通り淡麗な印象が第一.特に山田錦の直後では余計にそう感じる.
しかし,山田錦の向こうを張るために新潟県が苦心して開発したという米だけあってただ淡麗では終わらない.
淡麗の向こうに,スキッと鋭く旨みを研ぎ澄ました感じが溢れてくる.
山田とは違うフルーティな香り.
その香りの下側で,抑えた甘みと抑えた旨味.
しかしその甘さ・旨味がほのかに舌に残り続ける.
いつまでも残るので,また次の一口が欲しくなる.
美味いっ.

着流しの和服が似合う切れ長美人の居酒屋女将といったところか.





ラベル: 鶴齢・特別純米・美山錦
マイ評価: ★★☆
美山錦は長野県生まれの酒米である.
長野の地酒と言ったら美山錦.
それを新潟の蔵元が使ったわけである.

美山錦は独特の酸味があるように自分は思う.思い違いだったらごめんなさい.

鶴齢の美山錦は淡麗に造られているが,越淡麗とはひと味違った淡麗さである.
比較で言うなら,鋭く切り込んでくるカミソリのような淡麗さ.


切れ長の美人女将に対比するなら,祭鉢巻きを締め上げたいなせな祭娘といったところか.
↑全然分かんねーよ

ただ,「本物の地酒」へのこだわりというわけでもないが,長野の米で新潟の造りというのが100%調和しているとまでは言えなかったか.
美味い酒ではあるが,★2つとしておく.




ラベル: 鶴齢・特別純米・五百万石
マイ評価: ★★☆
確かこの五百万石のだけ20BYで1年熟成だったはず.理由は不明.

それはともかく.

ある意味で「さすが五百万石」.
五百万石らしく,全く華はない.
言わずとしれた新潟の米・五百万石であるが,いかにも新潟の酒らしい,質実剛健で実直な抑えた味わいである.
男が黙って呑む酒,とでも言いたくなるような.

切れ長の美人女将でもなく,いなせな祭娘でもなく,
丁稚奉公の年季を納めた後も店に忠義を尽くして勤め上げている真面目が信条の番頭,みたいな酒である.
↑ますます分からん

★は2つだが,雪国の厳しさを思い浮かべて眉間に皺を寄せて酒を呑みたいときは,これ.

2010/03/14

梅乃宿・生酛・特別純米・無濾過生原酒 ★★★

ラベル: 梅乃宿・生酛・特別純米・無濾過生原酒
マイ評価: ★★★

  • 蔵元: 梅乃宿(奈良県葛城市)
  • 屋号: 
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 山田錦/日本晴(どっちかが麹米でどっちかが掛け米)
  • 精米歩合: 60%
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: なし
  • 日本酒度: 不明
  • アルコール度数: 17度以上18度未満
  • 美味しかった呑み方: 冷や
  • 火入れ: なし(生原酒)
酒屋でひとしきり日本酒談義に花が咲いた後,「これ面白い酒だよ」とおやじさんが店の奥から大事そうに出してきてくれた酒.
梅乃宿酒造の生酛だが,無濾過生原酒を数量限定で出荷したとのこと.梅乃宿のウェブサイトには出ていない(いくつかの酒屋のサイトには出ているが)から,よほど限定品なのかもしれない.

個人的には無濾過生原酒は最近ちょっと飽きてきた感があるのでどうかと思ったが,飲んだらすぐに吹き飛んだ.

美味い.

生酛を呑んだのはまだこれで3本目ぐらいだが,どうも生酛には共通する特有の酸味があるよう.
この生酛も独特の酸味.でも決して嫌な酸味ではなく,香りと旨味が溶け込んだ優れものの酸味
そして生原酒とは思えない,舌触りの柔らかさ.実際アルコール度数も原酒にしては珍しい方なのかな,18度未満と控え目.ピリピリ来るきつさは皆無.まるで加水したような柔らかさ.

60%と低めの精米ながらも香り高いのは山田錦ならではなんだろうか.

美味い.

蔵元によると,『昔ながらの「木製半切り桶」「木製蕪櫂」での伝承造りにこだわった生酛造り』とのこと.
金属タンクで工業的に作るのが当たり前になっている現代にこうした造りを伝えているのは嬉しいですね.

こんなの呑まされると無濾過生原酒も再びいろいろ呑みたくなるなあ.
そして生酛ももっともっと呑みたくなる.

2010/03/09

七本鎗・純米(玉栄)・14号酵母 ★★☆

ラベル: 七本鎗・純米(玉栄)・14号酵母
マイ評価: ★★☆

  • 蔵元: 冨田酒造(滋賀県木之本町)
  • 屋号: 七本鎗
  • 製造: 21BY(平成22年2月)
  • 酒米: 滋賀県産・玉栄100%
  • 精米歩合: 60%
  • 酵母: 協会1401号(※協会14号の派生酵母)
  • アルコール添加: なし
  • 日本酒度: +4
  • アルコール度数: 15度以上16度未満
  • 美味しかった呑み方: とりあえず冷や
  • 火入れ: あり
最近日本酒のことばかり書いていたらAdSenseに酒の通販の広告がたくさん出るようになったが,今日ついに….


Googleさんに心配してもらったのか自然食研さんに心配してもらったのか分かりませんが,酒量は1日1合を超えないよう常に注意しておりますし,週に1日以上休肝日を設けておりますし,年に1度は健康診断を受けておりますので,どうぞお目こぼしのほどを.m(_ _)m

さて気を取り直して,お気に入りの蔵元・七本鎗(冨田酒造)を久しぶりに賞味.

七本「鎗」.「槍(きへん)」ではなく「鎗(かねへん)」です.
蔵元のウェブサイトもドメイン名が「7yari.co.jp」と気合い入ってます.
賤ヶ岳の戦いで武功をあげた武将達.実体がどうだったかという議論もあるらしいがそれはさておき.

以前岐阜県の山間地・旧坂内村(現・揖斐川町坂内)に住んでいた時期があり,村はずれの八草峠という峠を越えるとそこはもう滋賀県だった.
何度か峠を越えて滋賀県側の麓・木之本町に遊びに行ったが,本当にこぢんまりした町ながらも,風情ある古い街並み保存あり,歴史ある地蔵尊あり,風流で美味しい寿司屋あり,近代的ながら伝統の美味しい和菓子屋あり(でっち羊羹最高),そして美味しい酒蔵ありで,大好きな町だった.

その美味しい酒蔵がこの冨田酒造で,滋賀県産の山田錦を使って香り高い良い酒造りをされる.
何でもこの酒蔵,かの北大路魯山人が投宿していたとか.ラベルの「七本鎗」も魯山人の篆刻をそのまま使用しているらしい.

今回買い求めたのは,滋賀県産・玉栄100%の純米酒.
【※玉栄って滋賀県生まれの酒米だと思い込んでいたが,調べてみたら(リンクの「た行」を参照)愛知県農業試験場の開発らしい. 愛知県生まれながらも,滋賀県に最も適しているとのことで滋賀県で多く栽培されているよう.滋賀県農業試験場開発の酒米は,吟吹雪.次は吟吹雪にトライ】

キリッとした味わい.でも淡麗ではない.旨味はきちんとある.
旨味はあるが,旨味を敢えて広げさせず四角にきっちりまとめました,という印象.そう,四角

協会酵母14号は酸が少な目になるらしく,1401号はその派生(泡無し) だそう.酵母のことはまだよく分からないなあ.

先の「初緑・ひやおろし」が天女なら,この七本鎗は男気.「江戸の世,裏街道渡世に身をやつした己を恥じながらも一宿一飯わらじを脱いだ先には命を懸けて仁義を尽くすやくざ者」みたいだね,とヨメに言ったら例によってハナで嗤われる

そのヨメ曰く,「あー,これ呑んだら刺身が食べたくなった」.
そうですね,刺身も合いそうだし,小料理屋で小鉢を突きながら一献,という感じです.

2010/03/07

菊姫8連発

 
先輩に誘われて「一見さんお断り・完全予約制」の和食屋で会食した.
といっても高級料亭などではなく,初老のご夫婦2人だけで営まれるごくごくこぢんまりした店.そういう店なので店名は書かない方が礼儀であろう.
事前にストリートビューで店構えを確かめたらあまりに小さくて目を疑い,足を運んでこの目で見た店舗も“場末のおでん屋”に見間違われても仕方ないような外観.えらく低いサッシのドアを頭を縮めてくぐる.

さて料理は言うまでもなく絶品だったのだが,それは皆さんご自分の舌で確かめてください.(←イヤミ)

本題はもちろん酒.

料理と並ぶこの店の決定的な売りは,石川県を代表して全国にその名を轟かせる菊姫全ラベル完備していること.最高ランクの菊姫は金を積むだけでは手に入らない代物らしい(ちょうど八海山の金剛心のような位置づけか)ので,そのことだけでもこの店が蔵元(あるいは取次店)からいかに尊重されているかが分かる.

筋金入りの日本酒好きの先輩ばかりと会食したので,料理を食べに行ったのか菊姫を呑みに行ったのかどっちやらで,それでも皆翌日のことを考えて控え目に控え目で菊姫8連発で幕を引いた.
ちなみにメニューの写真を取り忘れてきたが,菊姫全部で20ラベル近くあったか.数えておけば良かった.

今回初めて知ったが,菊姫は全て山田錦
最近自分は,
  • 水は言うまでもなく,
  • 米も地元=当県開発の酒造好適米,
  • できれば酵母も地元=当県開発の酵母or蔵付き酵母,
  • できれば酒母中の乳酸も地元=生酛or山廃
という“本物の地酒”にこだわっているので兵庫の蔵元でない山田錦酒(特にYK35みたいな)は避けつつあるのだが,菊姫ぐらいの別格になるとこだわりません(←権威に弱い).

さて食べ始めて飲み始めて早々に酔いが回り始めたので味を正確に覚えているか自信がないのだが,忘れないうちに8連発一気記載(いつも書く細かい分類は今回は省略.蔵元のウェブサイトでどうぞ).

 
菊姫1発目「先一杯(まずいっぱい)」(写真右)
メニューは右から左へ高級度が増すように並んでいて,どれから行こうか一同迷っていたら女将さんが右から4つ目ぐらいの「先一杯(まずいっぱい)」をラベルどおり勧めてくれた.(※右から2つぐらいは本醸造だった)
純米酒だが,いきなり,
え,これで「まず一杯目」のつもりなのかよ
という出来映え.細かくは覚えていないが,「きっちり・しっかり・良い出来に仕上がりました」という感じ.あかんでしょうこれは.
菊姫2発目「山廃純米・無濾過生原酒」(写真左)
生原酒好きの先輩が所望.
んー,自分はこのところ,火入れ・加水をして「これがうちの味」という調整をした酒をじっくり味わうのが好みになってきているので,上記の「先一杯」の「これのどこがまず一杯目やねん」というインパクトに比べれば穏当な印象(もちろん舌触りは生原酒ならではで穏当ではない).
っていうか,今の自分には生原酒のラベルごとの違いが分かりにくいなー….



菊姫3発目「大吟醸」 
この頃既に酔いが回っていて「美味かった」という記憶しかない….
50%精米.

  
菊姫4発目「B.Y.大吟醸」
BY=Brewing Year,すなわち醸造年度を意味する.ちなみに日本酒の醸造年度は7月~翌年6月だそう.
これだけだとラベルの意味が分からないが,菊姫の場合は熟成させてから出荷する品が多いらしいので,新酒の大吟醸には敢えて「BY」を冠して区別しているとのこと.「年ごとの違いをお楽しみ下さい」とな.
ということは今回呑んだのは21BYということか.
えー,「美味かった」です(笑).

  
菊姫5発目「鶴乃里」
純米です.
なんかね,それまでとは違う「お!」という感じがあったんだけど,忘れちゃいました….すごく旨味が深かったのかな…?
要は「美味かった」です….

  
 菊姫6発目「黒吟」
明らかにこれまでとは一線を画して,一口で「古酒だ!」と分かる味わい.
色も山吹色が他に比べて強い印象.
あとで調べてみたら案の定3年古酒だった.蔵元によると「首吊り」「ビン貯」「三年もの」だそう.首吊りとは俗称で袋絞りのこと.それを瓶詰めしてからの3年貯蔵.
古酒ってもともと得意じゃなかった(というか本当に美味しい古酒を飲んだことがなかった)が,なるほどこれは美味い.
古酒にもはまりそう.

  
 菊姫7発目「にごり酒」
これまでメニューを右から左へと遷移してきたが,一気に右へと揺り戻って右から3つ目だったか5つ目だったか.
ちょうどこの日が3月3日雛祭りで女性の先輩もいたので,白酒代わりに菊姫「にごり酒」.
「以前この店に来たときはトイレに籠もりっきりだったのよー」とあっけらかんと告白するお雛様に乾杯.

  
菊姫8発目「菊理媛(くくりひめ)」
そろそろ料理も大詰めという頃,ついに雛先輩が口を開いた.
ここまで来たら, 菊理媛(くくりひめ),いっとくしかないでしょう」
雛先輩,今日はまだトイレには籠もっていない.

自分はこのラベルはこの店で初めて知ったが,とりあえずメニューには副題のように「十一年古酒」と書いてあるだけ.
「11年古酒???」
10年古酒を酒屋の店頭で見かけたことはあるが,老ね香(ひねか)がよっぽどすごいんだろうと思って敬遠していた(つまり呑んだことがない).
しかし菊姫の最高峰である菊理媛(くくりひめ),いったいどんな味やら.

ところで菊理媛(くくりひめ),白山神社に祀られる神様だそうである.蔵元が霊峰・白山を望む白山市にあるのが由来か.岡野玲子の「陰陽師」にも登場している(7巻・都に呪い出た菅原道真のさらに上空に出現).

値段もまた破格である.
100ml入り程度のコップ1杯で「○千円!」(畏れ多くて書けません;通常のフランス料理店の一番高いディナーコースレベル).1人では絶対に注文できない.
あとでネットで調べてみたら一升瓶が「○万円!」(昔北海道を離れるときに思い出にと大奮発して泊まった洞爺湖のウィンザーホテル1室1泊より高い;その翌年サミットが開かれてビックリだった).

しかし一同酔っぱらって何の異存もない.
全員でコップ1杯をシェアするということで(それまでの酒も大方そうしたが),女将さんにオーダー.
するとコップに注いでくれながら女将さんが一言.
日本酒のうんちくがどうのなんて全部吹っ飛ぶ酒だからね」.

 それまで生原酒がどうの山廃がどうのとさんざんうんちくを語り合いながら菊姫を堪能してきた我々だが,女将さんのその一言にシンとなって居住まいを正して一口ずついただく.

….

…….

……….

「なんだこの普通すぎる美味さは!」

一同全く同じ感想.
何も言われずに呑んだら,「ふむ,きっちり作られたバランスの良い美味しいお酒ですね」と簡単にコメントしてしまいそうな.
ある意味で,「この酒のここがすごい」と言えるところが何もない

でも数秒して気付いたが,「これで11年ものの古酒なのか!?」.
老ね香(ひねか)ゼロ
新酒と言われても疑わない.
そういえば色も殆ど無色透明.山吹色がない.

…決して,拍子抜けなどではない.「こんなものか」という底の見える感想などでは決してない.
何というのか,凄すぎて凄さが分からないというか,凄さが超越していてかえって普通になっているというか.
そこで雛先輩が歴史に残るコメント.
「ああ,酒も深まって極まっていくとグルッと元に戻ってくるんだね」
女将さんの言った「日本酒のうんちくがどうのなんて全部吹っ飛ぶ酒だからねに一同大いに納得.

先日ご縁あって,ある傑出した禅僧にお会いし親しくお話をさせていただいたが,誤解を恐れずに率直に申し上げれば「普通に良い方」だった.
「うわっ,大事了畢底の禅僧ってすごいな」というようなオーラとか威厳のようなものは微塵もなく,十牛図の十枚目「入壥垂手(にってんすいしゅ)」とはこのことだったかとお見送りしたあとでようやく気付いたほど.

そのお坊様を思い浮かべるような,この菊理媛.

敬意を込めて,マイ評価させていただきました.

ラベル: 菊姫・菊理媛(くくりひめ)
マイ評価: ★×
  • 蔵元: 菊姫合資会社(石川県白山市)
  • 屋号: 菊姫
  • 製造: 平成9年
  • 酒米: 山田錦100%
  • 精米歩合: 不明,でもどうでもいい
  • 酵母: 不明,でもどうでもいい
  • アルコール添加: 不明,でもどうでもいい
  • 日本酒度: 不明,でもどうでもいい
  • アルコール度数: 不明,でもどうでもいい
  • 美味しかった呑み方: 冷蔵しか呑んでいない,でもどうでもいい
  • 火入れ: してあるはずだが,でもどうでもいい

2010/02/27

初緑・特別純米・ひやおろし ★★★+★!

 

ラベル: 初緑・特別純米・ひやおろし
マイ評価: ★★★+★!
  • 蔵元: 高木酒造(岐阜県下呂市金山町)
  • 屋号: 
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 岐阜県産ひだほまれ100%【ひだほまれは唯一の岐阜県生まれの酒米】
  • 精米歩合: 55%
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: なし
  • 日本酒度: +2
  • アルコール度数: 15度
  • 美味しかった呑み方: 冷や
  • 火入れ: ひやおろし,いわゆる「後生」
ああああああ~~~~~何ということか,よくぞ作ってくださいました!!!
高木酒造・南部杜氏・畠山勝美様,これはもう絶品ですよ!!!

たまたま知人に岐阜の地酒を進呈しようと,いきつけの酒屋「中島屋」さんで「ひだほまれ100%の地酒ください」と気軽にお願いした.そこで勧められたのがこれ.
自分も呑んだこと無かったので,自家用にも1本買い求めた.ただそれだけのきっかけ.
中島屋さんによると,「初緑」のラベルは今回誕生したらしく,自分が呑んだこと無いのは当然.
同じ初緑・特別純米の「ひやおろし」と「火入れ」があったので,何となくでひやおろしを選んだ.

自分が呑む前に知人に進呈し(いい加減な贈り物で済みません),帰宅後に自分でも開けてみた.
疲れて帰ってきたので一口だけ飲んでパッパと寝ようと.

が.

が.

が!!!

美味い!!旨い!!うまい!!!

 何というのかこう,ふわっと流れるようなと言うか,優しいというか,うむ,これはまともに言語化できない.
言語化できないから,画像化してみた.


(Powered by Inkscape 0.46)
こんな絵まで描くなんて,アホです.
この画像を嫁に見せたらハナで嗤って,やおら一口呑んでしばらく考えて一言.
「うん.これ,天女の羽衣だよ」
(特別出演・古田へう○もの守殿)

ヨメあんた,上手いこと言うねえ.
この柔らかい感じはひやおろしならではのところもあるのかと想像する(火入れも飲み比べてみないと分からないが).
でも決して,ウケや流行りを狙ったような浮ついた羽衣ではない.あくまでも実直で真面目でしかも良い意味での「こぢんまり」感がしっかり伝わる良品である.
何口か呑むと,旨味に裏付けられた甘みが口中に残るようになる.でも全くしつこくない.むしろ止まらない.一口で終えるつもりだったのが,やめられないとまらない「かっ○えびせん」状態に.

岐阜の地酒は全体としてはたぶん日本一を争えるようなレベルではないのかもしれないが(蔵元さん達ごめんなさい),だからこそ,地産のものでじっくりしっかり良い酒を造ろうとする静かな心意気が伝わるようで,とても嬉しい.
だから,味だけでも自分としては★★★だが,さらにそこに岐阜県民としての応援を込めて「+★」.

これきっと,鮎に合う.鮎の塩焼き,鮎魚田,鮎雑炊.岐阜の酒に,岐阜を代表する魚・鮎.
今は2月だから鮎は手に入らないけど,夏に鮎に合わせて是非呑んでみたい(でもその頃はひやおろしとして存在していないかも).

2010/02/13

久保田・生原酒(特別本醸造) ★★★

 

ラベル: 久保田・生原酒
マイ評価: ★★★(さらに数ヶ月後・数年後に期待)
  • 蔵元: 朝日酒造(新潟県長岡市)
  • 屋号: 久保田
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 地元産の五百万石100%
  • 精米歩合: 55%
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: あり
  • 日本酒度: 不明
  • アルコール度数: 18-19度
  • 美味しかった呑み方: 冷や
  • 火入れ: もちろんなし
実はたまたま蔵元を見学する機会があって,一通り工程を拝見し,最後に絞り槽のところまで来たところで絞ったばかりの生原酒のテイスティングのチャンス…と思ったら,「あー,もう出荷しちゃってないですね」….残念無念.

それから数時間後に隣町の酒屋へ.
すると酒屋の店主が「まだ1時間前に入荷したばかりだよ」と見せてくれたのがこの酒.
つまり,自分が蔵元見学でテイスティングし損なったその酒に,瓶詰めされた状態で酒屋でついに出会ったという次第.
これはご縁でしょうということでもちろん買い.

あとで調べて分かったが,久保田ラベルの誕生(復活?)20周年を記念して初めて市場に出された貴重なものだそう.偶然にも出荷のその日に蔵元を見せていただき,店に入荷したホヤホヤ商品を買い求める機会に恵まれたというわけ.
これは何かのご縁ですな. これからも久保田をご贔屓にさせてもらいましょう.

さて入手してすぐに開栓,賞味.
生原酒なので微発泡感はもちろん舌に突き刺さるが,それほど強い印象でもない.
味は他の酒蔵の生原酒に比べると大人しい方かもしれない.甘みもそこそこ,香りもそこそこ.
開栓して数日間は「まあ生原酒だから美味しいけどこんなものかな」という感想だった.
ところで数日してからようやくアル添だったと気付く(ラベルには生原酒としか書いてなくて本醸造とは書いてない;裏をよく見ればアル添はちゃんと記載されていた).大人しい感じはそのせいもあったのかな.

ところがところが.
数日おきにちびりちびり飲んでいたが,3週間目ぐらいにふと気付く.
味が変化している!!
開栓直後に比べて,明らかに味がまろやかになり,味わいが増している.飲み終えた後の口中に残る余韻が良い.
なるほど生原酒だから日を追って変化していくのだろうが,それにしても3週間目で変化が分かる酒は初めて出会った(もっとも生原酒自体10種類ぐらいしか呑んだことないのだが).

以前「世界一旨い日本酒 熟成と燗で飲る本物の酒 (光文社新書)」という本(Amazonはこちら)を読んだが,これによると,
本当に美味い酒とは,常温熟成(要は室温で放置)させても味が崩れないで熟成されていく酒であり,しかもそれを燗で呑むのがよい
とのこと.
通常は高級酒ほど「冷蔵保存,開栓後はお早めに」が常識になっているが,この本によれば,
冷蔵で開栓直後に呑めば美味いが時間が経つと不味くなる酒というのは,造りがしっかりしていないダメな酒
 と一刀両断.賛否両論あるだろうが痛快ではある.

で,本書の筆者は,これはと思う酒は純米大吟醸だろうが生原酒だろうが室温で数ヶ月でも数年でも放置して熟成させて燗付けて呑むらしい.

ちょっと真似してみたいなー,と思っていたが,この「久保田・生原酒」ならその放置プレイに堪えられる「造りの良い酒」なのではないかと十分期待させるものがある.

貴重品だからもう手に入らないかもしれないけど,もし手に入るならもう3本ほど手に入れて,数ヶ月放置バージョンと数年放置バージョンを自分で試してみたいところ.

そういえば京都の日本酒バー「よらむ」さんで呑ませてもらった酒に,「ある蔵元の生原酒をこの店で丸3年室温放置したもの;冬の冷気も夏の熱気もそのままにさらしてあります」という貴重品があったが,未だかつて呑んだことない味だった.あの時はいい加減酔っぱらっていたので味の細かいところを覚えていないのだが,「生原酒で3年放置されて尚このしっかりした味なのか」と驚いたことだけは記憶に鮮明.

上記の著者の言う通りかもしれない.

「久保田・生原酒」,手元に残っている分だけでももっと長期間熟成(放置)させてみたいが,その前に全部呑んでしまわないか心配.

洗心・純米大吟醸 ★★☆

 

ラベル: 洗心・純米大吟醸
マイ評価: ★★☆
  • 蔵元: 朝日酒造(新潟県長岡市)
  • 屋号: 久保田
  • 製造: 21BY
  • 酒米: たかね錦・減肥栽培(たぶん100%)
  • 精米歩合: 28%(!)
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: なし
  • 日本酒度: +2
  • アルコール度数: 15度
  • 美味しかった呑み方: 冷や
  • 火入れ: あり
「久保田・百寿」「久保田・千寿」は全国どこの居酒屋でも見かける有名ブランド.
その久保田の蔵元(朝日酒造)が誇る最高級品がこの「洗心」だそう.4号瓶で約5,000円なり.

が…すいません,お上品すぎて野卑な私には魅力が100%分かりかねまする.

大吟醸だけど香りはかなり控え目.薄いとか足りないとかの控え目ではなく,あくまでも研ぎ澄まされた無駄のない静謐な感じ.
だからとても呑みやすい.日本酒嫌いな人でもスイスイ呑んでしまうだろう.八海山・純米吟醸に似たところがある.
でも,でも,もっと自己主張の強い酒が今どきの好みの私にとっては,お上品すぎる.5,000円の大枚はたいた実感が今ひとつ湧き上がらない.

もっと歳を重ねてもっと色んな酒を呑まないとこの酒の本当の魅力は分からないかもしれないなあ.
自分の未熟さに乾杯.

2010/02/05

越の寒中梅・亀の尾・純米吟醸 ★★☆

ラベル: 越の寒中梅・亀の尾・純米吟醸
マイ評価: ★★☆
  • 蔵元: 新潟銘醸(新潟県小千谷市)
  • 屋号: 
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 亀の尾
  • 精米歩合: 55%
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: なし
  • 日本酒度: +2~+4
  • アルコール度数: 15度
  • 美味しかった呑み方: ぬる燗
  • 火入れ: あり
 「実直な酒」,そんな感じを受ける.

 最初に冷やで口にしたとき,まず「あ,これは燗付けて呑みたいな」と感じた.
 香り高い酒をよく見かけるせいか,相対的に古風(?)というか実直な印象の味.比較的辛口だが刺激は強くなく,甘みよりも旨味をしっかり感じる.
 が,が,しかし.
 冷やでは味が「寝ている」ような気がした.悪い意味ではないのだが平板というか,「奥にもっとありますよ」と言われたような.

 そこでぬる燗を付けてみる.
 すると予想どおり,味が「立った」.立体的になったというか.「ああ,これがこの酒の本来の味なのか」と思えるような安心感が出て来る.
 実直で真面目な旨味.安心できる落ち着いた味.
 幅広い料理に合いそうだし,酒だけで呑み続けても美味い.

 ふと,庭に降り積もる雪をこたつに丸くなって眺めながら焼き餅をつつきつつぬる燗に付けたこの酒を呑みたくなった(もちろん我が家ではそんな風流な真似は出来ません).

 酒屋の店主によれば,この酒は新酒品評会の燗酒部門で金賞を取ったとのこと.
 確かにね.

 酒米「亀の尾」はWikipediaによると明治時代の山形県生まれの食用米(!).そのまま酒造好適米としても用いられ,さらに品種改良で五百万石が子品種として生まれたとか.
 親子の米を配合して作られた酒という点でも面白い酒です.

2010/02/04

田友・純米吟醸 ★★★



ラベル: 田友(でんゆう)・純米吟醸
マイ評価: ★★★
  • 蔵元: 高の井酒造(新潟県小千谷市)
  • 屋号: 
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 越端麗100%(新潟県農業総合研究所作物研究センター,新潟県醸造試験場,新潟県酒造組合による共同開発)
  • 精米歩合: 55%
  • 酵母: 新潟酵母G9
  • アルコール添加: なし
  • 日本酒度: +2
  • アルコール度数: 15-16度
  • 美味しかった呑み方: 冷や,熱燗,燗冷まし
  • 火入れ: あり
 これはただ美味いだけじゃない,「本物の地酒」という点で他を圧倒する.

 以下,小千谷の酒屋店主の話の受け売り.

 何よりもこの米は「越端麗(こしたんれい)」と言って,新潟県が15年の歳月をかけてようやく数年前に商用栽培に成功した念願の酒造好適米とのこと.
 いまや酒米と言えばどこを向いても山田錦(元は兵庫県生まれ)のような印象があるが,山田錦が支持されるのは強い吟醸香のため.新酒品評会では他の米は吟醸香華やかな山田錦にどうしても勝てないらしい.YK35なんて揶揄する言葉すらあるそうですな.
 その山田錦に新酒品評会でも何とか勝てる米を新潟の誇りにかけて生み出したいと関係者が苦心して開発したのが,この「越端麗」だそう.

 そして酵母にも新潟県が開発した「新潟酵母G9」を使用.

 よって,米の開発地,米の産地,酵母の産地,もちろん仕込み水,のどれをとっても「新潟」という正真正銘の本物の地酒が,この「田友・純米吟醸」.


 その味はと言えば,冷やで口に含むとジワリと柔らかい甘みと香りが染み通る.55%精米・アル添なしのためか吟醸香は強いとは言えないが,口に含んでいるうちにバニラとフルーツを混ぜ合わせたような甘い香りがスラスラスラっと広がる.低い声で「うまいっ」と唸らせる逸品.純米ならではの強い舌触りはもちろん健在.
 次に燗を付けてみる.ぬる燗にするつもりがうっかり熱燗になってしまったが,冷やとは全く違う酒になるので驚く.熱燗でも舌や鼻をつくようなきつさは皆無で,一方甘い香りは冷やと違って舌に乗った瞬間に一気に膨らむ感じ.香りが舌の上でブワッと球のように大きくなるというか.やられた.
 そして何より燗冷ましが美味い.冷やでの酒の強さが消え,熱燗での香りのふくらみもなりをひそめ,柔らかい甘みと香りだけが実に優しく舌を撫でる.討ち死に.

 美味いです.

 酒屋の主人によると,越端麗は商用栽培には成功したものの品質を安定・向上させるのにまだ数年はかかりそうとのことで,越端麗の酒は来年以降も成長が期待できるらしい.

 いや参った.

2010/02/03

美の川・越の雄町・大吟醸 ★★★

ラベル: 美の川・越の雄町・大吟醸
マイ評価: ★★★
  • 蔵元: 美の川酒造(新潟県長岡市)
  • 屋号: 美の川
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 岡山生まれ・新潟産「備前雄町」100%
  • 精米歩合: 40%
  • 酵母: 不明
  • アルコール添加: あり
  • 日本酒度: +4
  • アルコール度数: 16-17度
  • 美味しかった呑み方: 冷や,人肌燗
  • 火入れ: あり

 これは犯罪ですよ,この酒は.
 こんなタイプの酒は呑んだことがない.

 岡山県生まれながら非常に作付けが僅少で幻と呼ばれた「備前雄町」を,新潟の酒蔵・美の川酒造の7代目社長が苦心惨憺の末岡山から入手して新潟で栽培に成功,それを大吟に仕立てた酒とのこと.
 化粧箱にはその苦労話(日本経済新聞掲載)と社長直筆の手紙が入っている.

 苦労話もさることながら,この味には面食らう.
 おそろしく柔らかくて舌で溶けるような,でも酒としての強さもきちんとある.
 鼻で嗅いでも口に含んでも広がるバニラ香(嫁には否定されたが自分ははっきり感じる).
 アル添はいかにも「ハイ,ちょっと醸造アルコール混ぜてみました」という味がありありとするので好かないが,この酒に関しては「この味を作るためにアル添がある」と思わせるだけの凄みがある.

 京都あたりの本当に美味しい小料理屋(おばんざいの店?)で丁寧にダシを取ってごく薄味に仕上げた飛竜頭をつつきながら呑んでみたい.

 冷やすときっとダメなはず(保管はもちろん冷蔵庫で).
 冷やで文句なしに美味いが,人肌燗につけると舌に乗せた瞬間に酒の鋭さが消えてふくよかなバニラ香だけがブワッと広がるのもたまらなく良い.

 新潟の酒には完敗.

信濃鶴・しぼりたて純米生酒 ★★☆

ラベル: 信濃鶴・しぼりたて純米生酒
マイ評価: ★★☆
  • 蔵元: 長生社,長野県駒ヶ根市(伊那谷)
  • 屋号: 信濃鶴
  • 製造: 21BY
  • 酒米: 伊那谷産の美山錦100%
  • 精米歩合: 60%
  • 酵母: 不明
  • 日本酒度: +4
  • アルコール度数: 16-17度
  • 美味しかった呑み方: 冷や,冷蔵
  • 火入れなしの無濾過生原酒.

生原酒らしい荒々しい微発泡感は当然として,そのすぐ後から華やかな芳香が立ち上がる.

純米の鋭さもきちんと活きている.

生原酒はどれもガツン系の料理に合うと思うのだが,これは夜中に濃い味の夜食をこっそりつまみながら呑むといいかもしれない.カップ焼きそばなんか合っちゃったりして(杜氏に怒られるかな).